「私の書いた本が、国会図書館に保存される」
そう聞くと、なんだかすごいことのように思えませんか?
実はこれ、特別なことではなく、日本で本を出版するすべての人に関わる「ルール」なのです。
国立国会図書館には、日本国内で発行されたすべての出版物を収集・保存する使命があります。
そして、発行者には本を納める「義務」があります。
もちろん、自費出版で出版された本も例外ではありません。
ここでは、知っておくべき納本制度の仕組みと、あなたの本を国の歴史の一部として残すための手続きについて解説します。
国立国会図書館への納本制度とは
納本制度は、国の文化的資産を継承するための重要なシステムです。
日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存する制度
国立国会図書館法に基づき、国内で発行された図書、雑誌、新聞、CD、DVD、地図などは、国立国会図書館に納入することが義務付けられています。
国立国会図書館法に基づく義務
「義務」と聞くと堅苦しいですが、罰則が適用されることは稀です。
しかし、文化の継承という観点から、協力が強く求められています。
自費出版物も納本の対象
商業出版だけでなく、個人が費用を出して作った自費出版物も、広く頒布(販売や配布)されたものであれば納本の対象となります。
同人誌やZINEであっても、継続的に発行されていたり、一定の部数があったりする場合は対象になることがあります。
納本は発行者(出版社)の義務
納本する義務があるのは「発行者」です。
出版社から出版した場合は出版社が、個人で出版(発行)した場合は著者が行います。
文化的資産として後世に残る
納本された本は、国民の共有財産として大切に保存され、未来の読者に読み継がれていきます。
あなたの生きた証が、半永久的に残るのです。
納本の手続きと方法
手続きはとてもシンプルです。
郵送または持参による納本
国立国会図書館(東京本館または関西館)へ郵送するか、直接持参して納入します。
郵送の場合は、封筒の表に「納本在中」と朱書きします。
納本期限(発行から30日以内)
原則として、発行日から30日以内に納入することになっています。
多少遅れても受け付けてもらえますが、早めに送りましょう。
納本受領証の発行
納本が完了すると、後日「受領証」が送られてきます。
これが、あなたの本が国会図書館に収蔵された証明書となります。
ちょっとした記念になりますね。
代償金(定価の5割+送料)の受け取り(出版社からの納本のみ)
納本には費用がかかります(本の製造原価や送料)。
その一部を補償するために「代償金」を受け取ることができます。
通常は「定価の5割+送料」程度が支払われます。
(※寄贈として無償で納本することも可能です。手続きが簡略化されるため、個人の場合は寄贈を選ぶ人も多いです)
納本するメリット
義務だからというだけでなく、著者にとっても嬉しいメリットがあります。
自分の本が半永久的に保存される
自宅の本棚にある本は、いつか散逸してしまうかもしれません。
しかし、国会図書館なら、最適な環境で半永久的に保存されます。
孫の代、ひ孫の代まで、あなたの本が残るのです。
国会図書館のデータベース(NDLオンライン)で検索可能に
納本されると、書誌情報(タイトル、著者名など)がデータベースに登録されます。
インターネットを通じて誰でも検索できるようになり、本の存在が公になります。
全国の図書館からの相互貸借で読まれる可能性
近くの図書館にあなたの本がなくても、国会図書館から取り寄せて(相互貸借)、地元の図書館で閲覧することができるようになります。
全国の読者に届くチャンスが広がります。
著書としての公的な記録が残る
「国会図書館に本がある」という事実は、著者としての信頼性を高めます。
納本しなくてもいいケースはあるか
すべての印刷物が対象というわけではありません。
簡易なパンフレットやチラシ
一枚もののチラシや、一時的な利用に限られる簡易なパンフレットなどは対象外です。
著しく部数が少ない私家版(要確認)
親族のみに配る極少部数の私家版などは、収集の対象にならない場合があります。
ただし、明確な基準はないため、迷う場合は問い合わせるのが確実です。
電子書籍の納本(現在はオンライン資料収集制度へ)
電子書籍(Kindleなど)は、紙の本とは別の「オンライン資料収集制度」の対象となります。
現在は、民間の電子書籍(有償・DRMあり)の収集実験が行われている段階で、すべての電子書籍が義務化されているわけではありません(2023年時点)。電子書籍(Kindle)で自費出版する方法!仕組み・印税・成功のコツを完全解説 もご覧ください。
迷ったら納本課に問い合わせる
「私の本は納本すべき?」と迷ったら、国立国会図書館の収集書誌部(納本課)に電話で問い合わせてみましょう。
丁寧に教えてくれます。
まとめ
納本は、あなたの本を「個人の所有物」から「国の文化財」へと昇華させる手続きです。
たった一冊の本でも、そこには時代の空気が詰まっています。
未来の誰かが、あなたの本を手に取り、何かを感じ取ってくれるかもしれない。
そんなロマンを感じながら、ぜひ納本を行ってください。
