「書き上げた原稿を、プロの編集者に読んでほしい」
「あわよくば、そこから出版デビューしたい」
そんな熱い想いを胸に、出版社への持ち込みを考えている方もいるでしょう。
ドラマや漫画の世界ではよく見る光景ですが、実際のところ、持ち込みは有効な手段なのでしょうか?
編集者の目に留まり、チャンスを掴むための作法と心得をお伝えします。
出版社への持ち込みとは
持ち込みとは、その名の通り、著者が自分の原稿や企画書を出版社に直接持って行き、編集者に見てもらうことです。
新人賞への応募と並んで、商業出版を目指すための王道ルートの一つと言えます。
原稿を直接出版社に持ち込んで出版を依頼すること
かつては、分厚い封筒を抱えて出版社の門を叩くのが一般的でした。
編集者と直接対面し、作品への想いを熱く語る。
その熱意が伝われば、デビューへの道が開けるかもしれません。
商業出版を目指すための王道ルートの一つ
多くの有名作家が、下積み時代に持ち込みを経験しています。
厳しいダメ出しを受け、何度も書き直し、ようやくデビューを勝ち取る。
そんなサクセスストーリーに憧れる人は多いはずです。
自費出版の相談として持ち込むケース
最近では、商業出版だけでなく、自費出版の相談として持ち込みを受け付けている出版社も増えています。
「費用はかかってもいいから、プロのアドバイスを受けて本を作りたい」という場合、対面での相談は非常に有効です。
アポイントなしの突撃はNG
ただし、いきなり原稿を持って出版社に押しかけるのは絶対にNGです。
編集者は常に締め切りに追われており、多忙を極めています。
アポイントなしの訪問は、迷惑以外の何物でもありません。門前払いを食らうのがオチです。
持ち込みの手順とマナー
では、どのようにアプローチすれば良いのでしょうか。
社会人としての最低限のマナーを守ることが、第一関門突破の鍵です。
出版社のWebサイトで持ち込み可否を確認する
まずは、その出版社が持ち込みを受け付けているかどうかを調べましょう。
公式サイトの「採用情報」や「原稿募集」のページに記載されていることが多いです。
「持ち込み不可」と明記されている会社に連絡するのはやめましょう。
企画書と原稿(概要)を準備する
いきなり膨大な原稿を読ませるのは酷です。
まずはA4用紙1〜2枚程度にまとめた「企画書」と、作品の「あらすじ(概要)」を用意しましょう。
忙しい編集者でも、数分で内容が把握できる資料を作ることが、相手への配慮です。
電話やメールでアポイントを取る
持ち込み可の会社を見つけたら、電話やメールでアポイントを取ります。
「〇〇というジャンルの原稿を見ていただきたいのですが」と丁寧に伝えましょう。
断られても食い下がらず、「お忙しいところ失礼しました」と潔く引くのがマナーです。
担当編集者にプレゼンする
運良くアポイントが取れたら、いよいよプレゼンです。
身だしなみを整え、約束の時間の5分前には到着しましょう。
自分の作品の売りは何か、誰に読んでほしいのか、簡潔かつ情熱的に伝えます。
相手の話をよく聞くことも忘れずに。
持ち込みで採用されるためのポイント
数ある持ち込みの中から、「これは!」と思わせるにはどうすれば良いのでしょうか。
編集者が見ているポイントは、意外とシビアです。
その出版社のカラーに合った企画か
出版社にはそれぞれの「色」があります。
文芸書に強い会社にビジネス書を持ち込んだり、実用書が得意な会社に詩集を持ち込んだりしていませんか?
相手の出版物を研究し、「御社だからこそ出したい」という理由を明確にしましょう。
類書との差別化ができているか
「似たような本は既にたくさんある」と言われないために、既存の本との違いをはっきりさせましょう。
あなただけの独自の視点、新しい切り口、未開拓のテーマ。
「なぜ今、この本を出す必要があるのか」を説得できれば、採用確率は上がります。
著者のプロフィール(実績、発信力)
商業出版の場合、著者の「売れる力」も重要視されます。
SNSのフォロワー数、ブログのPV数、講演実績、専門家としての肩書きなど。
「この人が書くなら売れそうだ」と思わせる材料を用意しましょう。
「売れる」根拠を数字で示す
「いい本だから売れるはず」という精神論は通用しません。
ターゲットとなる読者層の人口、類似書の販売部数など、客観的なデータを用いて市場性をアピールしましょう。出版企画書の書き方講座。編集者の心を掴む「売れる」企画の作り方 で企画書の書き方を学べます。
ビジネスパートナーとして信頼できると思わせることが大切です。
持ち込みが断られた時の対処法
残念ながら、持ち込みのほとんどは断られます。
しかし、そこで落ち込んでいては前には進めません。
断られた経験を糧に、次の一手を考えましょう。
フィードバックを素直に受け止める
もし編集者から具体的なアドバイスやダメ出しをもらえたら、それは大きな収穫です。
プロの視点からの指摘は、作品をブラッシュアップするための宝の山。
反論せずに素直に受け止め、修正に活かしましょう。
企画を練り直して他社に持ち込む
一社に断られたからといって、その作品がダメなわけではありません。
単にその会社のカラーに合わなかっただけかもしれません。
指摘された点を修正し、別の出版社にアタックしてみましょう。相性の良い編集者に出会えるまで、諦めないことが大切です。
コンテストに応募する
多くの出版社が主催している新人賞やコンテストに応募するのも一つの手です。
受賞すれば、華々しくデビューできるだけでなく、賞金や宣伝のバックアップも得られます。
実力を試す良い機会にもなります。
自費出版(MyISBNなど)で実績を作る
どこにも採用されなかったとしても、今は自分で出版できる時代です。
MyISBNなどで自費出版し、そこで実績を作ってから逆輸入的に商業出版を目指すルートもあります。
「売れた」という事実は、何よりも強い説得材料になります。
まとめ
持ち込みは、自分の作品を客観的に見つめ直し、プロの意見を聞ける貴重な機会です。
たとえ断られたとしても、その行動力と経験は、必ずあなたの作家としての血肉になります。
恐れずにドアをノックして、あなたの熱意をぶつけてみてください。
その一歩が、未来のベストセラーへの入り口になるかもしれませんよ。
