書店で本を選ぶとき、何を基準に手に取りますか?
タイトル、著者名、そして何より「表紙の雰囲気」ではないでしょうか。
「ジャケ買い」という言葉があるように、本の見た目=装丁(ブックデザイン)は、その本の運命を左右するほど重要です。
中身がどんなに素晴らしくても、表紙が魅力的でなければ、ページを開いてさえもらえません。
逆に、プロ顔負けのデザインなら、無名の著者の本でも手に取ってもらえるチャンスは格段に上がります。
ここでは、読者の視線を釘付けにする「装丁」の基礎知識から、素人っぽさを消してプロのような仕上がりにする具体的なテクニックまでを解説します。
装丁(ブックデザイン)とは
装丁とは、単に表紙の絵を描くことではありません。
本という「物体」全体をコーディネートする仕事です。
- 本の顔(表紙・カバー・帯):カバーデザイン、表紙、帯、見返しなど、外観の全て。
- 本文のデザイン(組版):フォント選び、文字の大きさ、行間、余白の取り方など、読みやすさを設計すること。
- 世界観の表現:著者が紡いだ言葉の世界を、色や形、質感として翻訳し、パッケージングすること。
読みやすい本文デザイン(組版)のコツ
まずは、読者が一番長く目にする「本文」のデザインから。
読みやすさは、ここにかかっています。
POD出版などを利用しご自身で作られる場合は、お手元にある書籍の行数や列数を参考にするのも一つです。
版面(はんづら)と余白の黄金比
紙面に対して、文字が印刷される範囲を「版面」と言います。
版面を大きくしすぎると(余白が狭いと)、窮屈で読みにくくなります。
逆に余白が広すぎると、間延びした印象になります。「余白を恐れない」ことが、上品な誌面を作るコツです。
フォント(書体)の使い分け
基本ルールとして、長文を読む本文には「明朝体」を使います。「はね」や「はらい」があり、可読性が高いからです。
一方、見出しや強調したい部分には、視認性の高い「ゴシック体」を使います。
この使い分けだけで、誌面にメリハリがつきます。
文字サイズと行間
文字が小さすぎたり、行間が詰まりすぎていたりすると、読者は疲れてしまいます。
一般的に、本文の文字サイズは9ポイント〜10.5ポイント程度。
行間は、文字サイズの50%〜70%程度空けると読みやすいと言われています。
売れる表紙デザインのテクニック
次は、本の顔である表紙です。ここで読者の心を掴まなければなりません。自費出版の本を売るには?マーケティング戦略と宣伝・広告テクニック でも触れますが、パッケージは重要です。
まずは書店に行って、自分の書いている本と同じジャンルの本の表紙を沢山確認してきましょう。
参考になるものが多いほどに具体的にデザインが可能です。
色彩心理を活用する
色は感情を動かします。
- 赤:情熱・エネルギー(ビジネス書、自己啓発)
- 青:知性・信頼(実用書、学術書)
- 緑:癒やし・自然(エッセイ、健康)
本の内容やターゲットに合わせてメインカラーを決め、色数を3色程度に抑えるとまとまりが出ます。
タイトルロゴを工夫する
既成のフォントをそのまま置くだけでなく、文字の間隔(カーニング)を調整したり、一部を変形させたりして「ロゴ化」すると、一気にプロっぽくなります。
帯(オビ)を効果的に使う
帯は最強の広告スペースです。
キャッチコピー、推薦文、著者の顔写真などを入れ、購買意欲を刺激します。
帯の色を表紙の補色(反対色)にすると、店頭で目立ちます。
デザインツールと依頼方法
プロに頼むか、自分でやるか。予算とスキルに合わせて選びましょう。
1. プロのデザイナーに依頼する
クオリティを最優先するなら、プロへの依頼が確実です。
MyCoverのようなサービスを使えば、あなたの本のコンセプトに合わせたデザインを提案してくれます。
費用はプランによって変わりますが、数万円程度です。
スキルシェアサービスのココナラなどを使うのも有効です。
数千円〜数万円で書籍の表紙デザインを作ってくれます。
ココナラで表紙デザイナーを探してみる
2. クラウドソーシングでコンペをする
ランサーズやクラウドワークスで、デザインコンペを開催する方法もあります。
多数の案から選べるのがメリットですが、良いディレクション(指示)が必要です。
3. 自分でデザインする(ツール活用)
最近は、無料デザインツールのCanvaでも、かなり質の高い表紙が作れるようになりました。
ただし、フォント選びや余白の取り方など、素人感が出やすい部分には注意が必要です。
書店で売れている本を参考に、「引き算のデザイン」を心がけましょう。
まとめ
装丁は、本に「服」を着せるようなものです。
TPOに合わせた、そしてその人の魅力を最大限に引き出す服を着せてあげれば、本は自信を持って世の中へ出ていけます。
「中身で勝負」は、手に取ってもらってからの話。
まずは最高の「顔」を作って、読者を振り向かせましょう。
読みやすさと美しさを兼ね備えたデザインは、あなたの本を、読者にとっての「宝物」に変えてくれるはずです。
