「本は書店で買うもの」
そんな常識は、もう古いかもしれません。
作り手が、読み手に直接手渡す。
野菜の直売所のように、顔の見える関係で本を売る「手売り(直販)」が、今、静かなブームになっています。
実は、自費出版において最も利益率が高く、かつ著者の満足度が高いのが、この手売りなのです。
Amazonでポチるのとは違う、温もりのある本の届け方。
ここでは、手売りの魅力と、実際に売るための場所やコツについてご紹介します。
手売り(直販)の魅力と可能性
なぜ、わざわざ自分で売るのでしょうか。
読者の顔が見える距離感
「面白そうですね」「応援しています」
そんな言葉を直接かけてもらえるのは、手売りならではの喜びです。
どんな人が自分の本に興味を持ってくれたのか、肌で感じることができます。
利益率が最も高い販売方法
書店や取次を通さないため、中間マージンが発生しません。
定価のすべてが売上になります(原価を除く)。
1冊売った時の利益は、書店流通の数倍になることもあります。自費出版の本を書店に置く「委託販売」とは?手数料やマナーを解説 と比較してみてください。
サインや握手など付加価値を提供できる
その場でサインをしたり、握手をしたり、一緒に写真を撮ったり。
「著者と会えた」という体験そのものが、本以上の価値になります。
熱量の高いファンを作れる
直接言葉を交わして買った本は、読者にとっても特別な一冊になります。
そこから濃いファン(リピーター)が生まれる可能性が高いです。
手売りができる場所と機会
どこに行けば、手売りができるのでしょうか。
文学フリマやコミティアなどの即売会
「文学フリマ」や「コミティア」など、自主制作本の即売会は全国で開催されています。
本好きが集まる場所なので、無名でも手にとってもらいやすいです。
出店料も数千円程度と手頃です。
自分の講演会やセミナー会場
講師として登壇する機会があれば、会場の後ろで著書を販売しましょう。
話を聞いて感動した直後の聴衆は、最も購入意欲が高い状態です。
友人・知人への直接販売
まずは身近な人から。
「本を出したから買って」と押し売りするのはNGですが、興味を持ってくれた人に「手元にあるよ」と案内するのは親切です。
ネットショップ(BASE、STORES)での通販
リアルな場だけでなく、自分のネットショップを開設して直販するのも「手売り」の一種です。
SNSで告知して、自分の手で梱包・発送します。自費出版の本を売るには?マーケティング戦略と宣伝・広告テクニック もあわせてご覧ください。
手売りのための準備物
イベントなどで対面販売する際の必需品です。
お釣り(小銭)と釣り銭トレイ
1,000円札や小銭(100円玉、500円玉)を多めに用意しておきましょう。
釣り銭トレイがあるとスムーズです。
ポップやポスターなどの販促物
遠くからでも目立つポスターや、本の内容を一言で伝えるPOP(卓上看板)は必須です。
「立ち読みOK」と書くだけでも、立ち止まる人が増えます。
名刺やショップカード
本を買わなかった人にも、名刺やショップカードを渡しましょう。
後で気になってネットで検索してくれるかもしれません。
持ち帰り用の袋
本を入れる袋を用意しておくと親切です。
雨の日はビニール袋が必須です。
手売りで売上を伸ばすコツ
ただ座っているだけでは売れません。
少しの工夫で売上は変わります。
立ち止まってくれた人への声かけ
「いらっしゃいませ」よりも「こんにちは」と自然に挨拶しましょう。
「見本ありますよ」「よかったら読んでみてください」と、まずは手に取ってもらうことを目指します。
試読(立ち読み)を促す
中身を見ないと本は買えません。
「立ち読み大歓迎」の雰囲気を作り、じっくり読んでもらいます。
セット販売や特典をつける
「2冊セットで〇〇円引き」や「購入特典としてポストカードをプレゼント」など、イベント限定のオファーを用意すると、購入の背中を押せます。
購入者との会話を楽しむ
「普段どんな本を読みますか?」「どちらから来ましたか?」
売り込みではなく、会話を楽しむ姿勢が大切です。
その会話が、次の作品のヒントになることもあります。
まとめ
1冊の本を手渡す。
そこには、重さ以上の「重み」があります。
あなたの手から、読者の手へ。
その小さな商いの積み重ねが、やがて大きな輪となって広がっていくのです。
まずは身近な一人に、あなたの言葉を届けてみませんか?
