ふと、これまでの人生を振り返りたくなる瞬間はありませんか?
定年退職を迎えたとき、還暦や古希のお祝いのとき、あるいは孫が生まれたとき。
「自分はどんな道を歩んできたのだろう」
「この経験を、誰かに伝えておきたい」
そんな想いが湧いてきたら、それは「自分史」や「自叙伝」を書くタイミングかもしれません。
これらは単なる過去の記録ではありません。
あなたの生きた証であり、未来の家族や後進への道しるべでもあります。
ここでは、自分史と自叙伝の違いから、無理なく書き進めるためのヒント、そして出版する意義について解説します。
自分史と自叙伝の違い
似ているようで、少しニュアンスが異なるこの2つ。
明確な定義はありませんが、一般的には次のような違いがあります。
自分史:事実の記録・客観的
「いつ、どこで、何をしたか」という事実に重きを置いた記録です。
家族や身近な人に向けて書かれることが多く、アルバムのような温かさがあります。
「人生の棚卸し」としての側面が強いのが特徴です。
自叙伝:内面の葛藤や成長・主観的
事実だけでなく、「その時どう感じたか」「なぜその決断をしたか」という内面に深く踏み込みます。
成功体験だけでなく、失敗や挫折、苦悩といった「影」の部分も隠さずに描くことで、一人の人間としてのドラマが浮かび上がります。
経営者やリーダーが、理念や経験を次世代に継承するために書くケースが多いです。
書くことのメリットと出版の意義
1. 人生の棚卸しと脳の活性化(自分史)
過去の出来事を書き出すことで、自分の人生を客観的に見つめ直すことができます。
「あの時の苦労があったから、今があるんだ」と肯定的に受け入れられるようになります。
また、記憶を呼び起こして文章にする作業は、脳にとって最高のエクササイズです。
2. 家族の絆が深まる(自分史)
普段は照れくさくて言えない家族への感謝や、子供たちへの想いも、本という形なら素直に伝えられます。
あなたの意外な一面を知って、家族の会話が弾むきっかけになるかもしれません。
3. 理念やノウハウの継承(自叙伝)
経営者やリーダーにとって、自叙伝は「生きた証」です。
創業の精神や経営哲学、培ってきたノウハウを体系立てて残すことで、社員や後進にとってのバイブルとなります。
口頭で語るよりも深く、長く心に残ります。
4. ブランド力の向上(自叙伝)
「本を出している」という事実は、著者個人の、ひいては会社の信用力を高めます。
名刺代わりに手渡すことで、初対面の相手にも深い理解と信頼を与えることができます。
読ませるための構成と書き方
「何から書けばいいかわからない」という方は、まずは構成を考えてみましょう。
年表形式で事実を整理する
いきなり文章を書こうとせず、まずは「自分年表」を作ってみるのがおすすめです。
西暦、年齢、その時の出来事(入学、就職、結婚など)、世の中のニュースなどを書き出していきます。
これだけでも立派な骨組みになります。
印象的なエピソードを掘り下げる
全てを網羅しようとすると大変です。
「一番嬉しかったこと」「一番辛かったこと」「忘れられない出会い」など、心が動いたエピソードをいくつか選び、そこを重点的に掘り下げてみましょう。
ドラマチックな構成(起承転結)
特に自叙伝の場合、平坦な道のりではなく、山あり谷ありのストーリーとして構成しましょう。
「どん底からの逆転劇」は、読者を惹きつける鉄板のパターンです。
失敗や葛藤も隠さずに書くことが、共感を生むポイントです。
写真や資料を効果的に使う
文章だけでなく、思い出の写真や、手紙、賞状などを掲載すると、より鮮やかに当時の空気が伝わります。
「百聞は一見にしかず」です。
出版方法と流通の考え方
目的によって、適した出版方法は異なります。
私家版(流通させない)
家族や親戚、社員など、限られた人だけに配るなら、流通に乗せない「私家版」で十分です。
ISBNコードも不要ですし、コストも抑えられます。1冊から少部数(小ロット)で自費出版!在庫リスクなしで本を作る方法 も参考にしてください。
私家版の本は物流にのせないため、印刷会社に相談することが適しています。
商業流通(流通に乗せて一般の方に買ってもらう)
広く世間に知らしめたい、ブランディングに使いたいなら、書店に並ぶ商業流通(あるいは流通対応の自費出版)を目指すべきです。
しっかりとした装丁とプロモーションが必要です。自費出版の流通ルート完全ガイド!書店・Amazon・直販の選び方と現実 で詳しく解説しています。
MyISBNなどの出版サービスを利用すると、数千円だけの費用で、小部数の手元在庫を持ちながらAmazonや楽天ブックスに並べて販売することが可能です。
まとめ
あなたの人生は、世界に一つだけの物語です。
それは、あなたにしか書けません。
文章が上手いか下手かなんて、気にする必要はありません。大切なのは、そこにあなたの「声」があるかどうかです。
「まだ早い」なんて言わずに、今から少しずつ、言葉を紡ぎ始めてみてはいかがでしょうか。
その小さな一歩が、あなたの人生を輝かせる素晴らしい一冊へと繋がっていくはずです。
