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自費出版の流通ルート完全ガイド!書店・Amazon・直販の選び方と現実

「本を作ったら、自動的に全国の本屋さんに並ぶんでしょ?」
残念ながら、そうではありません。
本を作る「制作」と、本を運ぶ「流通」は、全く別のシステムです。

特に日本では、出版流通の仕組みが複雑で、個人がそこに参入するには高いハードルがあります。
しかし、今はインターネットのおかげで、個人でも多様なルートで本を届けられるようになりました。

ここでは、知っているようで知らない出版流通の仕組みと、自費出版における現実的な選択肢について解説します。

目次

出版流通の仕組み(取次・書店・出版社)

日本の出版業界は、「出版社」「取次(とりつぎ)」「書店」の三者で成り立っています。

日本独自の「委託販売制度」

書店は、出版社から本を「買い取る」のではなく、「預かって販売する(委託)」形をとっています。
売れ残った本は、出版社に返品(返本)することができます。
これにより、書店はリスクを負わずに多種多様な本を置くことができるのです。

毎日200冊の新刊と返本サイクル

新刊は、取次会社を通じて全国の書店に配本されます。
しかし、毎日約200冊もの新刊が出るため、書店の棚は常に争奪戦です。
売れないと判断された本は、早ければ2週間程度で返本されてしまいます。
配本されてきたときの段ボールの中から出されず、一度も棚に並ぶことなく返本されることもしばしば…

自費出版の主な流通ルート

では、個人が自費出版した本を流通させるにはどうすればいいのでしょうか。

1. 書店流通(出版社経由):ハードルは極めて高い

自費出版サービスを行っている出版社と契約し、その出版社の流通網を使って書店に配本してもらう方法です。
しかし、自費出版の本が書店の店頭に並ぶことは、一千万円以上の予算を割かない限り不可能と言っても過言ではありません。
全国の書店にばら撒くための手数料、在庫管理費、広告宣伝費などが膨大にかかるからです。自費出版の費用相場とシミュレーション!100部・500部の見積もり目安 を参照してください。

そのため、自費出版の本を取り扱ってもらうには、店頭に並べるのではなく「お客さんから書店に取寄依頼があった時に出版社から書店に書籍送る(店舗受注)」という形がメインになります。
「本屋に行けば必ずある」状態を作るのは、現実的には非常に難しいのです。

2. ネット書店流通(Amazonなど):現在の主流

Amazonや楽天ブックスなどのネット書店で販売する方法です。
リアル書店への配本は行いませんが、在庫リスクが低く、全国どこからでも購入できるため、現在の自費出版の主流となっています。

MyISBNなら店舗受注にも対応

通常、AmazonメインのPOD(プリント・オン・デマンド)出版は書店流通に対応していませんが、MyISBNなどの一部サービスは、店舗受注(客注)にも対応しています。
読者が書店で「この本をください」と注文すれば、書店経由で購入することができますので、インターネットが使えない方やクレジットカードを持っていない方でも本を買うことができます。

3. シェア型書店で販売:新しい売り方

最近、本屋さんの棚を借りて好きな本を売ることができる「シェア型書店」という業態が増えてきています。
月3,000円程度のお金を払えば書店内に自分の棚を持つことができ、出版した本を並べておくことができます。
この方法は自分自身が書店(の棚)のオーナーなので、「自著と推しの作家の本を並べて売る」ことなどもできます。

4.直販(自分のサイトやイベント)

自分のWebサイトやBASEなどのネットショップ、あるいは文学フリマなどのイベントで、読者に直接販売する方法です。
手数料がかからず利益率は高いですが、集客や発送作業をすべて自分で行う必要があります。自費出版は「手売り」が一番儲かる?直販の魅力と売るためのコツ で詳細を解説しています。

それでも書店に置きたい場合の「陳列」と「営業」

「どうしても地元の本屋さんに並べたい!」という場合は、著者が直接動くしかありません。

書店での陳列の種類

  • 平積み:表紙を上にして積まれる。一番目立つ特等席。
  • 面陳(めんちん):表紙を見せて立てる。視認性が高い。
  • 棚差し:背表紙だけが見える。ほとんどの本はここに行き着きます。

書店への直接営業(飛び込み)のポイント

  1. アポイントを取る:事前に電話で担当者に連絡します。
  2. 資料を持参する:見本誌、チラシ、注文書(書名、価格、ISBNなどを明記)を用意します。
  3. 委託条件を決める:掛け率(書店の利益率、通常2〜3割)や精算方法を相談します。
  4. アフターフォロー:置いてもらえたら定期的にお礼とメンテナンスに行きます。

流通にかかる費用とリスク

流通には、見えないコストとリスクが潜んでいます。

  • 流通手数料:売上の数%〜数十%を手数料として支払う必要があります。
  • 在庫リスク:書店流通させるには大量の在庫が必要です。売れ残れば保管料がかかり、最終的には廃棄処分(断裁)になることもあります。
  • 返本コスト:返本された本は傷んでいることが多く、再出荷できない場合があります。

まとめ

「流通=売れる」ではありません。
流通はあくまで、読者の手元に本を届けるための「パイプ」です。

大金をかけて書店に並べるギャンブルに出るよりも、Amazonを中心に堅実に届ける方法や、シェア型書店で自身が書店オーナーになって本を届ける方法を組み合わせる方が現実的です。また、手売りで一人ひとりに手渡すのは売上の数字以上に満足度の高い体験となります。

あなたの予算と目的に合わせて、最も幸せな届け方を選んでください。

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この記事を書いた人

初めて出版する個人著者さんに、Wordや一太郎を使ったかんたん・低コストな本づくりの手順をお伝えしています。
とくに、在庫リスクやムダな廃棄をなくし、環境にも経営にも優しいPOD出版という新しい形を広めることが今のテーマです。
返本率が過去最高と言われる出版業界の中で、「無理なく続けられる出版スタイル」を一緒に考えていきましょう。

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