「誤字脱字なんて、少しぐらいあっても意味は通じるでしょ?」
もしそう思っているなら、それは危険な落とし穴です。
読者は、私たちが思っている以上にミスに敏感です。
たった一つの誤字が、感動的なシーンの腰を折ったり、著者の信頼を一瞬で失墜させたりすることもあります。
「神は細部に宿る」と言われますが、本作りにおいて、その細部を磨き上げる作業こそが「校正・校閲」です。
ここでは、あなたの本を完璧な状態に仕上げるための、チェックの極意をお伝えします。
校正・校閲の重要性
なぜ、プロの出版物はあんなにもミスが少ないのでしょうか。
それは、何重ものチェック体制があるからです。
誤字脱字は著者の信頼を損なう
「この著者は、自分の本を読み返していないのかな?」
誤字が多いと、読者はそう感じてしまいます。
内容以前に、著者としての姿勢を疑われてしまうのです。
事実関係の誤りはトラブルの元
人名や地名の間違い、年代のズレなどは、場合によってはクレームやトラブルに発展しかねません。
特にノンフィクションや実用書では致命的です。
読者がストレスなく読めるようにする
スムーズに読める文章は、正しい日本語と表記ルールの上に成り立っています。
つっかえずに読めるということは、それだけで価値があるのです。
「てにをは」や表記のゆれを正す
「〜を行なう」と「〜を行う」が混在しているなど、表記のゆれは読者を混乱させます。
これらを統一することで、文章に品格が生まれます。
校正と校閲の違い
似ているようで、役割が違うこの2つ。
校正:文字の誤りやレイアウトの不備を正す
元の原稿と突き合わせて、文字の入力ミスや抜けがないかを確認します。
また、指定通りのフォントやレイアウトになっているかもチェックします。
「間違い探し」に近い作業です。
校閲:内容の矛盾や事実関係をチェックする
「1868年は明治元年だが、本文では慶応4年となっている」といった事実確認や、「さっきは右手に持っていたのに、次の行で左手を使っている」といった内容の矛盾を指摘します。
文章の意味に踏み込んでチェックする作業です。
素読みと突き合わせ
原稿を見ずにゲラ(校正刷り)だけを読んで間違いを探す「素読み」と、原稿と一字一句照らし合わせる「突き合わせ(引き合わせ)」。
両方のアプローチが必要です。
自費出版での校正の進め方
どこまで厳密にやるかは、予算と目的次第です。
著者校正(著者が自分でチェックする)
最低限、著者が責任を持ってチェックする必要があります。
しかし、自分の文章は脳内で補完して読んでしまうため、ミスに気づきにくいのが難点です。
AIによるチェック
AIは、著者の文章を読み返すだけでなく、文法や表現、表記ルールなどもチェックしてくれます。
無料で使えるサービスもありますので、著者校正と併用して使うと良いでしょう。
編集者によるチェック
担当編集者がいる場合は、彼らがプロの目でチェックしてくれます。自費出版における編集者の役割とは?プロの力で本を磨く も参考にしてください。
第三者の視点は非常に重要です。
プロの校正者への依頼(費用と効果)
予算があれば、校正専門の会社やフリーランスの校正者に依頼するのがベストです。
彼らは「間違いを見つけるプロ」です。
驚くほど細かいミスまで拾い上げてくれます。
校正記号の基本的な使い方
修正指示を出すときは、共通言語である「校正記号」を使うとスムーズです。
「トル(削除)」「イキ(元に戻す)」など、基本的な記号を覚えておくと便利です。
校正でチェックすべきポイント
自分でチェックする際は、以下のポイントを重点的に見ましょう。
固有名詞(人名・地名)の間違い
人の名前の間違いは失礼にあたります。
名刺や公式サイトなどで、漢字の細部まで確認しましょう。
数字(日付・金額・データ)の整合性
電話番号、住所の番地、西暦と和暦の対応など、数字は間違いやすい箇所です。
差別用語や不快な表現の有無
意図せず誰かを傷つける表現になっていないか、現代の基準に照らしてチェックします。
目次と本文の対応
目次のタイトルと本文のタイトルが違っていたり、ノンブル(ページ番号)がズレていたりすることはよくあります。
まとめ
校正は、地味で根気のいる作業です。
しかし、その一文字一文字へのこだわりが、読者への誠意であり、作品への愛情です。
印刷機が回る直前まで、諦めずに目を凝らしてください。
ミスゼロの完璧な本は難しいかもしれませんが、それに近づけようとする努力は、必ず本の品格となって表れます。
