「本を出したら、税金ってどうなるの?」
出版という夢を実現する過程で、ふと現実的な疑問が頭をよぎることがあります。
特に、売上が出て利益(印税)が入ってくるようになると、税金の問題は避けて通れません。
「会社にバレないかな?」
「経費で落とせるものはあるの?」
知らずに脱税になってしまったり、逆に損をしてしまったりしないよう、最低限の知識を持っておくことが大切です。
ここでは、自費出版に関わる税金の種類、経費の考え方、そして確定申告のルールについて解説します。
1. 自費出版にかかる税金の種類
主に関係してくる税金は以下の4つです。
消費税
- 支払う時:出版社に支払う制作費や流通手数料には、消費税がかかります。自費出版の費用相場とシミュレーション!100部・500部の見積もり目安 も確認しておきましょう。
- 受け取る時:本を売った時の売上にも消費税が含まれています(インボイス制度により、課税事業者か免税事業者かで扱いが異なります)。
所得税(個人の利益にかかる)
個人の場合、本の売上から経費を引いた「利益(所得)」に対して所得税がかかります。
会社員が副業で出版した場合も、利益が年間20万円を超えると確定申告が必要です。
法人税(法人の利益にかかる)
会社(法人)として出版し、利益が出た場合は、法人税の対象となります。
印紙税(契約書にかかる)
出版社と「出版契約書」を交わす際、契約金額によっては収入印紙を貼る必要があります。
なお、電子契約の場合は不要です。
2. 経費にできるもの・できないもの
税金を安くするには、正しく経費を計上することが重要です。
出版に関連する支出は、原則として経費になります。
- 制作費:出版社に支払った編集費、デザイン費、印刷費など。
- 広告宣伝費:チラシ、ポスター、Web広告費、名刺代など。
- 取材費:執筆のための交通費、宿泊費、資料代(書籍代)など。
- 在庫の評価損:売れ残った本を廃棄処分した場合の損失(廃棄損)。
領収書やレシートは必ず保管し、「いつ」「何のために」使ったかを記録しておきましょう。
3. 確定申告が必要なケース
「本が売れた!」と喜んでいたら、税務署からお尋ねが……なんてことにならないように。
副業の所得が20万円を超える場合
会社員(給与所得者)の場合、給与以外の所得(副業の利益)が年間20万円を超えると、確定申告の義務が発生します。
注意点は「売上」ではなく「所得(売上ー経費)」だということです。
売上が30万円でも、経費が15万円なら所得は15万円なので、確定申告は不要です(ただし、住民税の申告は必要です)。
本業(個人事業主)の場合
すでに個人事業主の人は、本の売上も事業の売上として計上し、まとめて申告します。
申告の流れ
- 1月1日〜12月31日の売上と経費を集計する。
- 翌年2月16日〜3月15日の間に、税務署に申告書を提出・納税する。
- e-Taxを使えば、自宅からスマホやPCで申告できます。
4. 消費税のインボイス制度との関係
2023年10月から始まったインボイス制度は、著者にも影響します。
出版社との取引
出版社が仕入税額控除を受けるために、著者に「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」への登録を求めてくる場合があります。
登録するかどうかの判断
- 登録する:消費税の納税義務が発生し、事務負担が増えますが、出版社との取引はスムーズになります。
- 登録しない(免税事業者のまま):消費税分の値下げを交渉される可能性があります。
自身の売上規模や取引先の方針に合わせて判断しましょう。
5. 節税対策の基本
- 青色申告:継続的に出版活動を行うなら、開業届を出して青色申告にしましょう。最大65万円の特別控除が受けられます。
- 家事按分:自宅で執筆している場合、家賃や光熱費の一部を経費にできます。
まとめ
税金は、利益が出た証(あかし)でもあります。
「難しそう」と敬遠せず、正しい知識を持って賢く納税しましょう。
確定申告は、自分のビジネス(出版活動)の成績表を確認する良い機会でもあります。
不安な場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
