キャンバスやスケッチブック、あるいはタブレットの中に広がる、あなただけの世界。
一枚一枚の絵は、あなたの魂の欠片です。
それらを集めて、一冊の「画集」という形に編み上げたとき、そこには単なる作品の羅列を超えた、濃密な物語が生まれます。
「自分の絵を本にしたい」
その夢を叶えることは、クリエイターとしての大きな飛躍になるはずです。
ここでは、あなたの作品の魅力を余すところなく伝えるための、画集作りのポイントをお話しします。
画集・イラスト集を自費出版する目的
画集を作る目的は人それぞれですが、共通しているのは「作品への愛」です。
作品のポートフォリオとして
プロを目指す人にとって、画集は最強の名刺(ポートフォリオ)になります。
編集者やクライアントに「私はこういう絵を描きます」と差し出せば、実力を一瞬で証明できます。
ファンへの頒布・販売
SNSなどで応援してくれるファンにとって、作家の画集は喉から手が出るほど欲しいアイテムです。
手に取れるグッズとして提供することで、ファンとの絆が深まります。
個展の図録として
個展を開く際、展示作品を収録した図録があれば、来場者は感動を家に持ち帰ることができます。
展示を見に来られなかった人への通販アイテムとしても有効です。
自分の創作活動の記録
描きためた作品を年代順にまとめることで、画風の変化や成長の軌跡を客観的に振り返ることができます。
画集制作でこだわるべきポイント
画集は「見る本」です。
視覚的なクオリティが全てを決めると言っても過言ではありません。
色の再現性(カラーマネジメント)
原画の色味をどこまで忠実に再現できるか。これが最大の課題です。
RGB(画面の色)とCMYK(印刷の色)の違いを理解し、色校正(試し刷り)を繰り返して、納得のいく色を追求しましょう。
用紙の選択(発色、手触り、厚み)
紙によって絵の表情は変わります。
鮮やかな発色ならコート紙やアート紙、水彩の優しい風合いならマット紙や画用紙のような質感の紙。
紙選びは、絵の一部を選ぶようなものです。
製本方法(見開きが綺麗に開くPUR製本など)
見開きで大きな絵を見せたい場合、ノド(中央)が隠れてしまわない製本を選びましょう。
180度フラットに開く「PUR製本」や「コデックス装」なら、一枚の絵画のように鑑賞できます。
表紙デザインと装丁
表紙は画集の顔です。
タイトルロゴの配置や、余白の取り方一つで、作品の格が上がります。自費出版の装丁(デザイン)完全ガイド!読者を惹きつける「本の顔」の作り方 も参考にしてください。
画集の費用と印刷方式
クオリティと予算のバランスをどう取るか。
オフセット印刷(高品質だが初期費用高)
色の再現性や滑らかさを追求するなら、やはりオフセット印刷が王道です。
版を作るため初期費用はかかりますが、数百部以上刷るなら一冊あたりの単価は下がります。
それでも相当な印刷費用がかかりますので、数百万円は必要です。自費出版の印刷・製本完全ガイド!オフセットとオンデマンド、上製本と並製本の選び方 で印刷方式の違いを解説しています。
オンデマンド印刷(少部数向け、品質も向上中)
数十部程度の少部数なら、オンデマンド印刷が現実的です。
最近のオンデマンド機は性能が上がり、オフセットに迫る品質のものも出てきています。
オンデマンドの場合、1冊3,000円~5,000円程度の費用で印刷できます。十冊程度であれば数万円程度で完成できます。
ページ数と部数のバランス
予算内で最高のクオリティを出すために、ページ数を絞って紙質を上げるか、紙質を落としてページ数を増やすか。
優先順位を決めて仕様を決定しましょう。
画集の販売とプロモーション
作った画集を、誰に、どう届けるか。
アートイベント(デザフェス、コミティア)での販売
「デザインフェスタ」や「コミティア」などのイベントは、画集を売る最高のステージです。
ブース作りにもこだわって、あなたの世界観を表現しましょう。
ネットショップ(BOOTH、BASE)での通販
自家通販サイトを持てば、全国のファンに届けられます。
BOOTHなどは創作系に特化しており、ユーザー層もマッチしています。
SNS(Twitter、Instagram、Pixiv)での宣伝
制作過程のラフや、中身のチラ見せ動画などをSNSに投稿し、発売前から期待感を高めましょう。
ハッシュタグを活用して、海外のファンに見つけてもらうことも可能です。
書店委託の可能性
アートブックに強い書店や、ヴィレッジヴァンガードなどの雑貨店に委託販売をお願いするのも一つのルートです。
まとめ
画集を作ることは、あなたの脳内にある美術館を、現実世界に建設するようなものです。
ページをめくるたびに、あなたの色が、線が、世界観が溢れ出す。
そんな一冊を作れたら、どんなに素敵でしょう。
妥協せず、こだわり抜いて。
あなただけの美術館を、世に送り出してください。
