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自費出版の印刷・製本完全ガイド!オフセットとオンデマンド、上製本と並製本の選び方

原稿が完成し、デザインも決まった。
いよいよ、あなたの本が形になる「印刷・製本」の工程です。
「本」という形になったとき、最初に手に触れるのは「表紙」であり、ページをめくる感触を決めるのは「紙」と「製本」です。
ずっしりと重厚なハードカバーにするか、軽やかで手に馴染むソフトカバーにするか。
印刷方式はオフセットか、オンデマンドか。
専門用語が多くて戸惑うかもしれませんが、これらの仕様選びは、本の仕上がり(クオリティ)と費用(コスト)に直結する重要な要素です。
ここでは、あなたの目的に合った最適な仕様を選ぶための、基礎知識と判断基準をお伝えします。

目次

印刷方式の種類と特徴

まずは、大きく分けて2つの印刷方式があることを理解しましょう。

オフセット印刷:大量印刷向け

商業出版で一般的に使われる方式です。「版(ハン)」を作ってインクを転写するため、写真や文字が非常に鮮明で、高品質な仕上がりになります。
版代という初期費用がかかるため、少部数だと割高になりますが、千部、一万部と刷れば刷るほど、一冊あたりの単価は劇的に安くなります。
「500部以上作って、書店に流通させたい」という場合は、オフセット印刷が適しています。費用については 自費出版の費用相場とシミュレーション!100部・500部の見積もり目安 もご覧ください。

オンデマンド印刷:少部数向け、版代がかからない最新技術

デジタルデータを直接出力する、高性能なレーザープリンターのような方式です。
版を作る必要がないため、1冊からでも安く印刷できます。
かつてはオフセットに比べて品質が劣ると言われていましたが、最近は技術が進歩し、素人目には区別がつかないレベルになっています。
この技術のおかげで、個人でもリスクなく出版できるようになり、オンデマンドで出版する人が急増しています。
MyISBNなどのPOD(プリント・オン・デマンド)サービスは、この技術を使っています。

用紙の選び方

紙が変われば、本の手触りも、めくり心地も、重さも変わります。

  • 書籍用紙:淡いクリーム色で、目が疲れにくい。小説やエッセイなどの読み物に最適。
  • 上質紙:白色で筆記性が高い。教科書やワークブック向き。
  • コート紙・マットコート紙:表面をコーティングしており、写真の発色が良い。写真集や画集に必須。

製本方法の種類と選び方

本をどう綴じるかによって、耐久性や開きやすさ、そして「佇まい」が変わります。

上製本(ハードカバー):高級感と耐久性

厚いボール紙を芯にした硬い表紙で、本文をくるむ製本です。
耐久性が高く、長期保存に適しています。
孫の代まで残したい自分史や、作品を美しく見せたい写真集、記念誌などで、高級感を出したい場合に選ばれます。ハードカバー(上製本)で自費出版!一生モノの本を作る魅力 でも解説しています。

ただし、かなり数百万円単位で高額な予算が必要です。

並製本(ソフトカバー):一般的でコストが安い

本文と同じくらいの厚さの紙を表紙にして、強力な糊で綴じる製本です。
文庫本や雑誌、多くのビジネス書がこれにあたります。
軽くて持ちやすく、コストも安く抑えられるため、最もポピュラーな製本方法です。

PUR製本:丈夫で開きやすい

並製本の一種ですが、従来の糊よりも強度が高く、かつ柔軟性のある「PUR糊」を使った製本です。
ページが根元まで開きやすいため、学習参考書やマニュアル本など、開いたままにしておきたい本に向いています。

製本オプションで個性を出す

基本的な製本にオプションを加えることで、さらにオリジナリティを出せます。

  • カバーと帯:本体の上に巻くジャケットと帯。本の顔であり、最強の広告スペースです。
  • 見返し:表紙の裏と本文をつなぐ紙。色付きの紙や風合いのある紙を使って、開いた瞬間の印象を華やかにできます。
  • スピン(しおり紐):背に埋め込まれたしおり紐。これがあるだけで一気に「本らしさ」が増します(主に上製本)。
  • 箔押し・エンボス:タイトルを金箔で押したり、浮き上がらせたりする加工。特別感を演出できます。

印刷費用の見積もりと節約術

印刷費は、仕様の組み合わせで決まります。

  • 部数とページ数:部数が増えれば単価は下がります。ページ数は紙代・印刷代に直結します。
  • カラーとモノクロ:フルカラーはコストが高いです。「口絵だけカラー」にするなどの工夫で節約できます。
  • 納期:スケジュールに余裕を持たせると、割引になる場合があります。
  • 相見積もり:印刷会社によって得意不得意があるため、必ず複数社から見積もりを取りましょう。

まとめ

印刷・製本された本は、あなたの想いが「物質」として結晶化したものです。
重み、手触り、匂い。デジタルでは決して味わえないその感覚こそが、紙の本の最大の魅力です。
予算と相談しながらも、譲れないこだわりを持って、世界に一つだけの「モノ」を作り上げてください。
ダンボールを開けて、出来上がった本と対面した瞬間の感動は、一生の宝物になるはずです。

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この記事を書いた人

初めて出版する個人著者さんに、Wordや一太郎を使ったかんたん・低コストな本づくりの手順をお伝えしています。
とくに、在庫リスクやムダな廃棄をなくし、環境にも経営にも優しいPOD出版という新しい形を広めることが今のテーマです。
返本率が過去最高と言われる出版業界の中で、「無理なく続けられる出版スタイル」を一緒に考えていきましょう。

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