書店でふと手に取った本が、ずっしりと重く、硬い表紙に包まれているとき。
それだけで「ああ、これは特別な本なんだな」と感じたことはありませんか?
それが「ハードカバー(上製本)」の持つ力です。
電子書籍やソフトカバーが主流になりつつある今だからこそ、あえてハードカバーを選ぶことには大きな意味があります。
それは単なる情報の器ではなく、あなたの想いを永遠に閉じ込める「宝箱」を作るようなものだからです。
ここでは、ハードカバーで自費出版をする魅力と、知っておくべきポイントについてお話しします。
ハードカバー(上製本)の特徴
ハードカバーは、その名の通り「硬い表紙」で本文をくるむ製本様式です。
専門用語では「上製本(じょうせいほん)」と呼ばれます。
本文の紙よりもひと回り大きな厚紙を表紙に使い、さらにその上からジャケット(カバー)を巻くのが一般的です。
糸で綴じるしっかりとした作りで、何度も開いたり閉じたりしても壊れにくいのが特徴です。
図書館に並んでいる本の多くがハードカバーなのは、この耐久性があるからこそです。
ハードカバーで自費出版するメリット
なぜ、コストをかけてまでハードカバーを選ぶのでしょうか。
そこには、数字では測れない情緒的な価値があります。
「本を出した」という実感が強い
完成した本を手にしたときの重み、表紙をめくるときの音、しっかりとした手触り。
そのすべてが「私は本を出したんだ」という深い満足感を与えてくれます。
著者の誇りを満たしてくれるのは、やはりハードカバーです。
記念誌や自分史など、長く残したい本に最適
親から子へ、子から孫へと読み継がれるような本にしたいなら、耐久性の高いハードカバー一択です。
数十年経っても色褪せない強さは、あなたの生きた証を守り続けてくれます。
図書館や書店での存在感がある
書棚に並んだときの背表紙の厚みと風格は、ソフトカバーとは比べものになりません。
「立派な本」というオーラを放ち、手に取る人に信頼感を与えます。
贈り物としても喜ばれる
お世話になった方への贈答品や、記念パーティーでの引き出物として配る場合、ハードカバーなら失礼がありません。
受け取った方も「大切なものをいただいた」と感じてくれるはずです。
ハードカバーのデメリットと注意点
もちろん、良いことばかりではありません。
「重厚」であることは、裏を返せば「重い」「厚い」ということでもあります。
制作費が高くなる(ソフトカバーの1.5倍〜2倍程度)
工程が複雑で手作業も多いため、どうしても制作費は高くなります。
ソフトカバーに比べて1.5倍〜2倍程度の予算を見ておく必要があります。自費出版の費用相場とシミュレーション!100部・500部の見積もり目安 で一般的な相場を確認できます。
例えばJIBUN出版では200ページの本を100冊作る場合、549,780円です。(3冊だけだと62,480円になります)
参考:JIBUN出版
重くて持ち運びには不向き
カバンに入れて持ち歩くには重すぎます。
電車の中で気軽に読んでもらうような本には向きません。
あくまで「家でじっくり読む本」という位置づけになります。
制作期間が長くなる傾向がある
製本工程に時間がかかるため、納品までのスケジュールは余裕を持って組む必要があります。
「来月のイベントに間に合わせたい!」といった急ぎの案件には不向きです。
保管スペースをとる
厚みがあるため、在庫を自宅で保管する場合、かなりのスペースを占領します。
事前に保管場所を確保しておくことをおすすめします。自費出版の在庫リスクを回避するには?在庫を持たない賢い出版方法 も参考にしてください。
ハードカバーが向いているジャンル
ハードカバーの特性を活かせるのは、次のようなジャンルです。
自分史・自叙伝
人生の集大成として残すなら、やはりハードカバーがふさわしいでしょう。
写真集・画集
作品の美しさを引き立て、保存性を高めるために選ばれます。
ページを開いたまま置いておける製本(コデックス装など)とも相性が良いです。
絵本
子供が乱暴に扱っても破れにくいよう、絵本の多くはハードカバーで作られています。
学術書・専門書
何度も参照される専門書は、耐久性が求められるためハードカバーが好まれます。
社史・記念誌
会社の歴史や功績を後世に伝えるための公式な記録として、格調高い装丁が求められます。
まとめ
ハードカバーで本を作ることは、家を建てることに似ているかもしれません。
時間はかかるし、お金もかかります。
でも、完成したときの感動と、そこに住まう(残る)安心感は、何物にも代えがたいものがあります。
もしあなたが、「多くの人に読んでほしい」ではなく「限られた方にプレゼントしたい」と考えているなら、迷わずハードカバーがおすすめです。
